昨今「DSEE Ultimate搭載のXperiaと組み合わせて使うと、高音質を維持しながらWF-1000XM5のバッテリー持ちが長くなる」と、ソニー公式が宣伝するようになりました。
原理は「アップスケーリングを行う機器をバッテリー残量の大きいスマートフォンで行うから」とのことですが…
「アップスケーリングを行う機種をイヤホン本体からスマートフォンに切り替えた程度で本当に変わるのか?」と気になったため、この記事ではその説について検証します。
公式はXperiaシリーズと抱き合わせて販売したいため、このようなことを言っているのか、それとも本当に持ちが良くなるのかを、実機を用いて確認します。
前提:何でバッテリー持ちが良くなると謳っているのか
そもそも、何故ソニー側がこのような主張をしているでしょうか。
それは、「音質を良くするための処理」をバッテリー容量の大きいスマートフォンで行うからです。
そもそも、DSEE Ultimate、DSEE Extremeとは、AIを用いてMP3、AAC、WMAといった非可逆圧縮音楽ファイル、ストリーミング音源等を解析し、失われた高域の音を予測、補完する技術のこと。
要は「どんな音源でも良い音にする」技術であり、ここで言う「音質を良くするための処理」の本質的な部分ということです。
そんな、DSEE Ultimate及びDSEE Extremeですが、DSEE UltimateはXperiaやウォークマン、DSEE ExtremeはWF-1000XM5やWH-1000XM4に搭載されており、どちらもAIを用いて同じ処理を行うため、バッテリーを消費します。
また、DSEE UltimateとDSEE Extremeを比較した場合、DSEE Ultimateの方が上位の技術であり、更に言えばDSEE Ultimate、DSEE Extremeはどちらか一方で処理を行えば効果を発揮するのです。
つまり、「音を良くする処理を上位の技術で尚且つ、バッテリー容量の大きい方で処理すればバッテリー持ちが良くなるよね」ということで、このような主張をしているといえます。
検証方法と仮説
検証方法
検証方法について簡単に説明します。
使用機材はSONY WF-1000XM5、DSEE Ultimateに対応したXperiaの2台。
WF-1000XM5側とXperia側でそれぞれ設定を変更しながら、WF-1000XM5のバッテリー持ち、音質の変化(主観)を検証します。(参考値として、Xperia側のバッテリー持ちも検証します)
視聴時間は30分とし、音楽を再生しだしたタイミングから計測を開始。
一般使用時を想定し、WF-1000XM5のノイズキャンセリング、アダプティブサウンドコントロールは全てONで計測します。
計測中はXperia側の画面はOFFにし、何かしらの音楽を再生し続けます。
計測後、より正確なバッテリー消費量を確認するためにバッテリー残量表示を確認後、再度ペアリングをし、その時の残量表示も確認します。
使用サービスはSpotify、検証条件は以下の通りです。
使用コーデック | DSEE Ultimate(Xperia) | DSEE Extreme(WF-1000XM5) |
---|---|---|
LDAC | ON | ON |
LDAC | ON | OFF |
LDAC | OFF | ON |
LDAC | OFF | OFF |
AAC | OFF | ON |
AAC | OFF | OFF |
SBC | OFF | ON |
SBC | OFF | OFF |
今回の検証内容における本質は上から3つの部分ですが、接続コーデックの違いによるバッテリー持ちの違いも確認したいので、8つの条件で確認します。
前提知識として、スマートフォン側のコーデックがAAC、SBCの場合はDSEE UltimateをONにしていても適応されず「ノーマル」の状態で再生されます。
また、Xperia 5Ⅳの場合、LDACをONにしていない時に接続されるコーデックはSBCに固定されます。
そのため、AACで接続したい場合は以下のような設定をしましょう。
- 1WF-1000XM5の「Bluetooth接続品質」を「接続優先」に変更
- 2Xperiaの設定アプリを開き、機器接続を開く(Bluetoothの設定画面を開く)
- 3WF-1000XM5のデバイスの詳細を開き「HD オーディオ:AAC」をONにする
もし、検証される方がいたらその点だけ注意してください。
使用機材
- スマートフォン:Xperia 5Ⅳ
- イヤホン:SONY WF-1000XM5
- 使用サービス:Spotify(音質は「高音質」に設定、ノーマライズはなし)
検証結果
検証結果は以下の通りです。
1~3%程度ではありますがソニーが言う通り、DSEE ExtremeをOFFにした状態の方がバッテリー消費が少ないという検証結果となりました。
LDAC接続時のDSEE Extreme使用時のバッテリー消費量はどの状態でも3~4%程となっており、他のコーデックで使用するときより少ないということも判明しました。
一方、スマートフォン側のバッテリー消費については、DSEE UltimateのON・OFF関係なく2~3%程度の消費に抑えられておりそこまで差が出ませんでした。
コーデックの違いとアップスケーリングの有無で音質に変化あり
各種設定ごとの音質について、筆者の主観になりますが述べていきます。
最も音質が良かった組み合わせは「LDAC + DSEE Ultimate」です。
「そりゃそうだろ」となったと思いますが、他の組み合わせと比較した際に情報量の差を感じる程、中低音域から高音域まで全ての音が充実して鳴っており、音の厚みも一番あるといえます。
完全ワイヤレスイヤホンで出せる音としては十分過ぎますし、流し聴きでもじっくり聴いても十分満足して楽しむことができると感じました。
また、LDAC接続においてDSEE Ultimate / ExtremeをOFFにした際の音質も、若干の薄っぺらさを感じる箇所はありますが、流し聴きであれば違いを感じる程ではないでしょう。
LDAC以外のコーデックの音質についてですが、LDAC接続時と比較して全体的なボリュームは少なくなり音の薄さが目立つ印象を受けました。
これはコーデック自体のデータ転送量の差が現れているためしょうがないといえます。
DSEE ExtremeをONにすると物足りなさは改善されるものの、LDAC接続時程の迫力や音の厚みを感じることはありませんでした。
以上の結果から、筆者は音質がこのようにして推移していくのではないかと考えました。
結論
結論、DSEE Ultimateを使用することで音質を維持しつつWF-1000XM5のバッテリー消費を少なくすることができるという結果になりました。
つまり、ソニーが主張することは間違っておらず、売り文句として誇張したものではないということがいえます。
以下は、今回の検証で分かったことを記します。
スマートフォン側のDSEE UltimateをON・OFF時においての変化は殆どないため、対応しているXperiaを使用しているならONにしておいた方が良いでしょう。
WF-1000XM5のDSEE Extremeについては、LDAC接続時にONにしていてもSBCコーデック接続時にONにしていても大して変化がないため、DSEE Ultimateに対応している機器でない限りONにしておいて問題ないといえます。
以上より、筆者が考える最適な組み合わせは以下のようになります。
尚、今回の結果については筆者の環境においてのものになりますのであくまでも目安程度に捉えてください。
また、WF-1000XM5の説明書に記載の通り、バッテリー残量表示はあくまでも目安になります。過信しないようにし、充電アナウンスがあったタイミングや充電ケースの残量が30%以下になったら充電するようにしましょう。
もし、本検証をより正確に、再走された方が居りましたら「ガジェラボ!公式X」にて共有していただけると幸いです。
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